何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

闇に染まる前の世界を見た

コンコン

京司の部屋を誰かがノックした。
それは、彼が部屋に閉じ込められて、4日が経った頃。

カチャカチャ ガチャ

そして部屋の扉が開いた。

「退屈そうね。」

その扉から顔を出したのは、皇后だった。
皇后は宰相に詰め寄り、何とかこの部屋の鍵を借りてきていた。

「ええ、まー。」

京司は気力のない声を出した。
この広い部屋には、生活するには問題ない品がそろっているが、さすがに4日も外に出られないんじゃ、飽き飽きするのは当たり前。

「あなたには、ココは似合わないものね。」

皇后が優しく、そして寂し気に京司に笑いかけた。

「え?」

京司がその言葉に思わず眉をひそめた。

「早く妃が決まるといいわね。」

そして、なぜか皇后はそう言って、また寂しげに笑う。

「母上…。」

なぜそんな事を突然皇后が言い出したのか、京司にはわからなかった。
しかし、彼女のその寂し気な表情が、気になって仕方ない。

「どうしたの?」
「その…事…なんですが…。」

ギュッ
京司は、十字架のネックレスを服の上から握りしめた。

「ん?」
「…。」

しかし京司は、下を向いたまま黙りこくった。

「妃の事?」

(俺はバカか。言えるか…。言えるはずがない…。)

「俺には妃が必要なんでしょうか?」

京司は顔を上げ、何かを誤魔化すかのように、そんな事を皇后に尋ねた。

「もちろんよ。」

そして、皇后は今度は優しく微笑んだ。

「どんな人が…。」

京司がまたポツリと言葉をこぼした。

「あなたを愛してくれる人。」
「え…?」

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