揺るぎのない愛と届かない気持ち

長内との話し 〜東吾

長内と会うことは気が重い。

長内は長内、紗英は紗英、、、
自分の中では違うところにいる。
紗英は俺が一番大事な人。
なのに
あの日俺は紗英に何をしたのか。
一番してはいけないことしてしまった。

居酒屋に着くと、
パーテーションで区切られた席で、
長内が待っていた。
心なしか、顔に生気がないようだった。
もっとも、俺も同じだが。

「呼び出して、悪かったな。」

「ううん、私も話したいと思っていたの。
東吾、私のことを避けていたから、、、
どうやって誘うおうかって。」

長内が痛ましげな顔をして、俺を見た。

「長内。」

「。。。。。」

俯いて返事をしない。

「俺たち、
こうやって二人で飲むことも食事することも、
話すこともやめよう。
共通の同期会の話なんかは、
グループメッセージで充分だし、
業務に関係することは、
社内メールでいいだろう、、、」

「要するに、個人的な繋がりを
抹消しようと言うのね。」

囁くように長内が言う。

「俺はずっと長内は一番親しい
異性の友人だと思っていた。

紗英は何も言わなかったけど、
そのことが紗英を絶えず
苦しめていた。
俺たちが友達同士にしては、
距離が近すぎるって。」

「東吾が結婚してから、
私たちは以前ほど一緒に飲みに行ったりも
しなかったと思うけど。
フットサルだって、私は東吾と友達に戻って、
2年したくらいに辞めちゃったし。
どうして、紗英さんが私たちのことを、
嫌がらなければいけないの?」

「ずっと紗英の中に、元カノだった長内の存在が
グレーであったんだろうな。」

「彼女、知ってたんだ。
東吾が言ったの?」

香衣さんが言った話が、本当だとしたら、
長内はしらばっくれている。

「俺がちゃんと言えばよかったのに、
やっぱり言いにくくて言わなかったのが
いけなかったのかもしれない。
俺の中では、長内は友達で、
それ以上でも以下でもないのに、、、」

「そうよ。
自分の旦那を信じないでどうするのよ。」

「いろいろとしでかしてしまったと、
今になって悔やまれることは多々あるけどな。
紗英が悪いのではなく、
俺が鈍感なのがいけないんだ。」

思い返せば、
どれだけ紗英を不安に落とし込んだのか、
それをいつも笑って
考えすぎだと、紗英に言っていた俺。

「長内、、、」

「。。。。。」

「あの日、どういうわけで俺たち危うく一線を
越えそうになったんだろう。

俺は、、、、
俺は、もうすでに長内のことをそういう関係にあるって
思っていなかった。
だから、紗英には申し訳なかったけど、
泥酔して終電にそり損ねたお前を、家に泊めた。

友達だからと、自分に言い聞かせて。

本当は、常識からしたら絶対に
してはいけないことだよな。

言い訳ができないことだ。」

「。。。。。」

「お前が泊めてと言った。
どうせ、紗英さん実家に帰っていないんでしょ。
明日朝、始発で帰るからって。。。

バカだよな、こんな状態で帰らせられない、
マリッジブルーで、泣いているお前を、
危なっかしくて。
マンションの隣近所の目なんか、
忘れて連れて帰ったら、、、」

「。。。。。」

「和室に布団を敷いてやったのに、
お前は俺たちのベッドの上で、服を脱ぎ始めて、、、
俺は慌てた。止めさせようとしたのに、
言うことなんか聞かない。
それで、、、」

「二人でもつれてベッドに倒れ込んで、、、
キスから始まって、本当に二人とも服を脱いで
私が、東吾の最後の一枚に手をかけた。。。」

「お前の冷たい手が、
俺の下着の中に滑り込んだ時に、
血が水に変わったんじゃないかと
思うくらい、全身から血の気が引いていったんだ。」

「東吾、
まるで身体の中にバネでも入っているって思うくらい、
もの凄い勢いで、ベッドから飛び降りたわね。」

もう少しで長内と身体を重ねたかと、
思うと俺はパニックに陥った。

紗英がいない俺たちのベッドで何をしているんだ。
長内となんてあり得ないだろ。
ただの友達なのに、俺の体は反応するのか。
俺はその辺の盛りのついた動物と一緒か。

自分を卑下する言葉が、
次から次に俺を苛んだ。



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