私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
遭遇


 銀行マンの延原から助言をもらって、彼の銀行に正式に依頼してからは
菜々美が古家を売却する話は順調に進んでいた。

元々、長年お付き合いがあったお隣からの申し出だったし、
銀行も不動産会社も良心的に対応してくれたから大助かりだ。

この分だと今月中か、遅くても来月上旬までにはすんなり決まるだろう。


『瀬川、土曜日の待ち合わせ何時にする?』

中塚から内線電話で連絡が入ったのは、木曜日の朝だった。

「あ、木下君と和美の結婚披露宴だよね。」

明後日の土曜日、同期カップルの結婚披露宴が都内のホテルで開かれる。

『俺とお前が受付だから、少し早く行こうぜ。』

「中塚…大阪弁、消えてる。」
『仕方ないよ、郷に入っては郷に従えだ。』

「ふうん。チョッと残念。」

『パーティーは13時からだから、12時にはホテルに着いときたいな。』

「そうね、じゃあ、正午までにホテルのロビーに集合しましょ。」


『いよいよ、同期のラストは俺とお前かあ…。』
「男の子達、結構みんな早かったね、結婚するの。」

『ま、俺たちのどっちが早いか…。俺がラストは飾ってやるから安心しろ。』
「あら、私よ。」

そんな冗談を言い合って、笑いながら電話を切った。


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