片恋
私の名前を呼んだのは、伊月くん。

なんだか焦った様子で、私の手を取っている。


「えっ?」

「こっち」

「えっと、あの、伊月くん……」

「いいから」

「は、はい、……え?」


少しも状況がつかめず、手を引かれるままについていく。


伊月くんは、去り際に振り向いて延藤くんを一瞥(いちべつ)したけど、すぐに進行方向に視線を戻した。
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