片恋
ずっと隣で黄色い声を上げながら歩く成美ちゃんとは、教室の扉のところで別れ、
私はひとりで自分の席へ。

隣には、片方だけイヤホンをした伊月くん。

ひとりだったのに、私が戻ってきた時のために、片方だけで待っていてくれたのかな。


「あ、真桜、おかえり。どこ行ってたんだ?」

おかえりって、なんか照れるな……。

「えっと、あの、ト……」


トイレって言いづらい。

言葉尻を「あはは」と濁して、片方のイヤホンを手に取る。


「聴いてもいい?」

「うん、そっち側、真桜のものだし」


ぎゅうっと胸が縮む。

当たり前のように指をさされて、不意をつかれた。


すぐに成美ちゃんの言葉を思い出して、一瞬呼吸を忘れた。


『特別扱い』。

……本当に?
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