エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
娶られる
純平さんは事情聴取をすると言ったから、車が向かう先は警視庁だと信じて疑わなかった。
ところが、外の風景は、私にも馴染みのある閑静な住宅街に変わっていき……。


「っ、えっ?」


ボンネットがへこんだベンツは、純平さんのタワーマンションの地下駐車場で停まった。
現状を把握しようと、きょろきょろと辺りを見回しているうちにエレベーターに乗せられ、一分も経たずに彼の部屋の玄関に足を踏み入れていた。


「じゅ、純平さん?」


戸惑って何度も瞬きをする私の背後で、純平さんが後ろ手にドアを閉める。
しっかりと施錠する音を聞いた、次の瞬間――。


「!?」


いきなり後ろから抱きしめられ、思わず身を捩った。
純平さんは構うことなく、覆い被さってくる。


「ひゃっ!」


私は彼もろとも、廊下に倒れ込んでしまった。
彼が私の後頭部を手で支えてくれていたから、ゴツンとぶつけずには済んだものの。


「いきなりなにをするんですかっ……」


繰り出した抗議の最後は、ドキッと跳ねた心臓のせいで尻すぼみになった。
純平さんは、四つん這いになって、私を囲い込んでいる。
真上から、吸い込まれそうなほど黒い瞳で、まっすぐ射貫いてくる。
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