気が付くと、見知らぬ男性の隣に寝ていた。いや、全然知らないわけではない。彼女が働いている酒場の客だ。その客として彼が酒場に現れた時も、どこかで見た顔だな、と思っていた。だけど、思い出せない。そんな関係の男性。
 多分、恐らく、まだ夜。むしろ夜中だろう。外は暗い。
 そろりと動くと、まだ少し、お腹の下あたりが痛いかもしれない。

 ――こ、これは……。どう見ても、やっちまったよね……。

「ん? 起きたのか?」

 やばい。この人に気付かれる前に逃げようと思ったのに。

「起こしてしまいましたか?」
 淑女では無いくせに、淑女を装ってそれっぽい笑顔で答えてみた。彼がイメージしている自分を損なわせないように、と。

「いや。君の可愛らしい寝顔を見ていた」

 ぐほっ、と何かが口から出そうになった。それを堪える。そういう甘い言葉には慣れていないのだ。不意打ちは本当にやめて欲しい。