だけどシェインにとってその状況はよくなかった。急に、目の前が真っ暗になって、ガクンと力が抜けたのだ。一人で立つこともできないような感覚に襲われる。

「シェイン?」
 カウンター席の男は、不安になって彼女の名を呼ぶが、彼女は半分意識を失っている。
 シェインは薄れいく意識の中で猛烈に反省していた。先ほど、魔導盗聴器のために魔力を使っていた。そして、今、三人に立て続けに眠りの魔法を放った。魔導士ではないシェインは、保持している魔力がすこぶる少ないのだ。
 つまり、これは魔力切れ。魔導盗聴器のことが無ければ、三人くらいお安い御用だったのに。

 だから、シェインは気付かなかった。このカウンターの男が、シェインを抱きしめながら。
「もしかして、魔力切れか? このシェインという少女、魔導士か?」
 と呟いていることに。
「魔導士であるならば、好都合だな」

 男は腕の中のシェインの大きな眼鏡を外した。あどけない顔。二つのおさげ髪もほどく。絹のような髪。ずっと、触れてみたいと思っていたそれ。

 そして彼女を横抱きにすると、カウンターの男はその場を去った。この少女を連れて向かう場所は、一つしかない。彼女を、確実に自分のものにするために。そのためにも、一月以上、あの酒場に通ったのだから。