シェインが『夜鳴亭(よなきてい)』に裏から入ると、店長は忙しそうに仕込みをしていた。

「あー、シェインちゃん。悪いんだけど、二階の片づけお願いできる? 昨日の客ね。暴れてね、大変だったんだよ。食器類だけは下げたんだけどね。掃除をお願いしたいの」
 という、ぼやき。

「わかりました」

 シェインらしく元気に答える。これは魔導盗聴器を回収する絶好のチャンスではないか。掃除道具片手に、シェインは二階へと駆けあがった。

 二階の広間のその様子を目にして、店長が言っていたことをよく理解することができた。
 なんで、椅子があっちの方に飛んでいるんだろう? 背もたれもしっかりとしているわりと重さがある椅子なのに。衝立も倒れているし。と、首を傾げたくなるようなその光景。一体何が起こったのか。これは、この魔導盗聴器の中身を確認するのが楽しみだ。

 テーブルが無事だったのは、料理があったから、だろうか。そのテーブルに近づき、昨日張り付けた魔導盗聴器を回収する。この状況の中、無事でよかった魔導盗聴器。このテーブルの客に見つかって、取られたり壊されたりしたらどうしよう、という不安がなかったわけではない。ローガンから自分の身体と魔導盗聴器とどっちが大事なの、と責められるくらい大事な大事な盗聴器。
 だけど、まだまだこの魔導盗聴器も改良が必要で、今は手の平に収まるくらいのサイズだけれど、さらに小型化を目指しているところ。できれば小指の爪程度の大きさにしたい。そのためには、もう少し特殊な材料が必要なようだ。とか、ついつい魔導盗聴器に思いを寄せてしまう。