やばいやばいやばい――。

 シェインという名は偽名。彼女の本名はシャンテル・ハウスラー。こう見えても騎士団に所属する女騎士。学生時代はこう見えても成績優等生。
 この国には騎士団が二つある。王族や要人警護を行う黄金騎士団。そして、警備を主に担当する白銀騎士団。
 だがシャンテルが所属している騎士団はその二つのどちらでもなかった。国王陛下直属の組織。闇に紛れて情報を操るのが主な仕事、そしてちょっと手の汚れるような仕事もする漆黒騎士団。ところが、黄金も白銀もその漆黒の存在を知らない。それだけ秘密裏にされている組織。
 普段は王族に仕える事務官として、仕事をこなしている漆黒騎士団のメンバー。もちろん、シャンテルもそのうちの一人。そして、昨日の夜は漆黒騎士団としての潜入調査だった、はずだ。

 ――なんだったんだ、あいつは。

 残念なことに、まだ、お腹の下に何やら違和感がある。
 まんまとやれてしまった、という気持ちもあった。だけど、ちょっとだけ好みの顔だったというのもあった。
 完全に流されてしまった。恐らく、あの顔にやられた。悔しい。
 抵抗したけれど、恐らく抵抗になっていなかったのだろう。だって、本気で抵抗していなかったのだから。