身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
すぐに子どもができるなどと甘いことを考えたつもりはなかったが、それでも何度か体を重ねたにもかかわらず妊娠できていない事実は不安を煽る。

仁ももしかしたら同じことを考えているかもしれない。

椿と仁は結婚の約束こそ交わしたけれど、それは椿が京蕗家の跡取りを産めることを前提として成り立っているわけで、産めない体と判断されれば婚約を破棄されかねない。

そんな不安を抱えながら結果を聞きに行ったこの日。

医師から「まったく問題ありません」とのお墨付きをもらい、椿は揚々と自宅に帰ってきた。

「ただいま――」

リビングに顔を出すと、先に仕事を終えた父親がテレビを、それも珍しくゴシップ系のニュース番組を食い入るように見つめていた。

なにかしら?と覗き込むと【砂羽秋乃(32)、衝撃熱愛発覚】というテロップ。

砂羽秋乃(さわあきの)とは椿が十代の頃に清純派と謳われ人気を博していたアイドル。現在は実力派女優として、ドラマや映画で活躍している。

色白で背が高く、手脚がスラッとしていて日本人離れしたスタイルの美女だ。心なしか上品な顔立ちが菖蒲に似ている。

「椿……これはどういうことだ」

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