俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
憂悶デパーチャー

 火災の影響を受けた部屋は、案の定すすと水浸しでなんとも無残な状態になっていた。

 無事だったのは衣類くらいで、やはり新たな生活を始めるには負担が大きすぎる。ひとまず今日のところは必要なものだけ持って、天澤さんの本拠地にお邪魔させてもらうことになった。

 タクシーに揺られること約三十分、到着したのは二十九階建てのラグジュアリーなタワーマンション。

 アプローチからすでに高級感満載で、やはり天澤さんはこちらのほうが似合っていると思う。Tシャツに短パン姿の私が来ていい場所ではないとも。

 恥ずかしい思いをしながらコンシェルジュに見送られて向かった二十五階に、彼の住処があった。白を基調とした清潔感のある部屋は2LDKで、シンプルなインテリアが洗練された印象を与えている。

 遠慮がちにお邪魔した私は、まずリビングの大きな窓から見える光景に圧倒された。美しい夜景と、レトロな赤い光が灯る東京タワーが一望できるのだ。

 フローリングに荷物を置くと導かれるようにその窓に近寄り、感嘆の声を漏らす。


「うわぁ、すごい眺め……! 綺麗」
「俺は向こうのほうが好きだったけどな」


 隣にやってきた彼がそう言うのは、たぶん飛行機がよく見られたからなのだろう。あそこからの景色が好きなのは私も同じなので、口元を緩めて「わかります」と頷いた。
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