音に祈りを!歌に願いを!
「……俺が音ゲーを始めたのは、小学6年生の頃のとある出来事がきっかけだったんだ」

「……とある出来事?」

僕は悠の方を向かずに、足を止めることなく口を動かした。



これは、小学6年生の夏頃の話。俺はさ、今とは考えられないくらいに大人しかったし、髪も結べるくらい長かったんだ。

だから友達も少なかったし、悠みたいに1人で毎日読書したり絵を描いたりしてたんだ。

ある日、友達がさ。

『もう俺に関わるな。趣味が合わないから話したくない』って。

俺とその友達と趣味って、全然合わなかったんだよ。俺は読書と絵を描くことが趣味で、友達は音ゲーが趣味だったんだ。

なかなか話が合わなくてさ、つまらなくなったんだろうね。

そう言って、友達が離れていったんだよ。でも、俺は……その友達と話すのが好きだったから。

話が合う時もあって、普通に楽しかったんだ。

だから、話を合わせたくて始めた……のは良いけど、それが楽しくて楽しくて。

今ではガチ勢になるほど、音ゲーが大好きになったんだよね。

俺……音ゲー始めるの、遅かったのかな。もっと早く始めていれば、友達は離れて行かずに済んだのかな……。



「……」

僕が話し終えると、悠は何を思ったのか立ち止まった。
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