獅子組と私

【嫉妬】

飛鳥と椎那。
日々お互いへの想いを募らせて、落ちていく。

しかし想いのぶつけ方が全く違う。
同じように“ヤキモチ”を妬いても、椎那は━━━━
“私をだけを見てほしい”
“寂しい”
と切なくなる程度で済むが、飛鳥は違う。

そのヤキモチが、憎しみにスライドして“嫉妬”になる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「いらっしゃいませ」
「エビちゃん、おはよ!今日もモーニングね!」
「村部さん、おはようございます」

村部の毎朝の楽しみ、このレストランでモーニングを食べながら椎那を見つめること。

小柄な椎那が、一生懸命働く姿が可愛らしくて癒されるのだ。
今日も一日頑張ろうと思えるから。

「村部さん」
「ん?」
「今日から、モーニング二種類から選べるようになったんですよ!和食か洋食。どっちにしますか?」
「へぇー、そうなんだぁ。
じゃあ…洋食にしようかな?コーヒー飲みたいし」
「はい!少々お待ちください」
微笑み、踵を返す椎那。

「あ、エビちゃん!」
「え?はい、どうしました?和食にしますか?」
「あ、いや、今日は彼氏はいないんだね?」
「え?あ、はい。今日は講義が忙しいみたいで……」
「そうなんだ!じゃあ…ゆっくり見てられるな……」
嬉しそうに微笑む、村部。

「え?あの、村部さん?」
「あ、いや!何も!」
この日の村部は、なかなかレストランを出ずコーヒーを何杯もおかわりしながら、椎那を見ていた。

「村部さん」
「ん?」
もう何杯目かわからない、コーヒーのおかわりを運んできて声をかける椎那。
「お仕事は大丈夫なんですか?」
「あー僕、自営だから!ほとんど家の中で仕事してるんだよ!だから、今も実は仕事中」
「そうなんですね」
「エビちゃん、もうすぐ終わりだよね?仕事」

「え?」
(なんで、わかるの?)
「なんで、わかるの?って表情(かお)だ。
さっき、話してたの聞こえたんだよ」

「あ、そうなんですね。はい、もうすぐあがりですけど……何か…?」
「ううんー」
含みのある村部の笑顔があった。
< 35 / 90 >

この作品をシェア

pagetop