獅子組と私
伝える
“絶対、惚れさせてみせるから!”
その飛鳥の言葉から、わずか一ヶ月。

本当に惚れさせられた、椎那。

それもそのはず、飛鳥と椎那はその日のうちに連絡先を交換し、次の日から飛鳥は椎那に会いに毎日アパートに来るようになった。

毎朝迎えに来て職場まで送り、講義がない時には職場に来店し、椎那の昼休みは一緒にランチ。
もちろん帰りも、家まで送る。

休みの日は必ずデートに誘われ、時には道彦達とみんなで遊ぶ。

そんな生活が、一ヶ月丸々続いた。


「じゃあね、椎那。また明日迎えに来るからね!」
「あ、あの!飛鳥くん!」
椎那はある決意をもって、飛鳥の服を握り呼び止めた。
「ん?何?」
「………////あ、あのね…?」
「うん」
「あの…」
「ん?」
「もう…少し…話さない?」
「うん!もちろん!僕も椎那とは、できる限り離れたくないし。どこ行く?この近くの公園に━━━━━━」

「あの!家に!ご、ご招待を………」

(…って、招待って…!パーティーじゃないんだから!
私のバカ!)

「家はやめとく」
「え……?」
椎那が変な誘い方になり自分に突っ込んでいると、飛鳥は真剣な顔で言い椎那の手を離した。

「近くの公園に行こ?」
「な…んで…?」
「…………椎那、わかんないの?」
「え?」
「僕、椎那の事本気だって言ったよね?」
「うん」

「そんな僕だよ?
椎那の家なんかに入ったら、確実に襲うよ?
きっと、我慢なんてできない。
椎那の言う段階をふんでって、いまだによくわかんないけど、付き合ってもない僕とそんなことできないでしょ?
まだ、手を繋ぐのもできてないのに……」

飛鳥は、椎那を大切に想っている。
それはこの一ヶ月の飛鳥と過ごして、痛い程感じていた。
基本的にバイクでの移動なのに、飛鳥は椎那の意向に合わせて歩きと電車を使ってくれている。
更に歩いている時、さりげなく歩道の内側に椎那を誘導する。
椎那を最優先に考えてくれる飛鳥の気持ちに答えたいと思っていた。

「椎那、公園行こ?」
そう言って、先に行こうとする飛鳥。

「私も飛鳥くんのこと好き!!」
そんな飛鳥の背中に、ぶつけるように言った椎那だった。
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