獅子組と私
共に生きる
次の日の朝。
「飛鳥くん」
「ん?」
「ギュってしない?」
椎那が、両手を広げている。
今日は椎那は仕事が休みの為、玄関先で飛鳥に甘えていた。

「………」
「ごめん、もう大学行かないと……」
「え……?」
「椎那、行ってくるね」
飛鳥が視線を反らし、椎那の頭をポンポンと撫でて外に出ようとする。

飛鳥くんが……
私を……
抱き締めない………。

「飛鳥くん!待って!」
パシッ━━━!
「え……」
椎那が、飛鳥の服を掴む。
しかしその手を払いのけた。
「あ…ごめんね…行ってくるね」

飛鳥くんが……
私の……
手を払った………。

何が起こっているのだろう?
こんなこと初めてだ。
飛鳥と椎那。
運命に導かれたように、出逢い、愛し合っている二人。
どんなことがあっても放れられず、特に飛鳥は狂う程に椎那を愛している。
だから、飛鳥が椎那を拒否することは、100%あり得ない。
特に飛鳥は、10歳年上の椎那を“可愛い”と言って抱き締め、四六時中触れていないと生きてはいけない程に、愛の深さが深く強い。

その飛鳥が、初めて椎那を拒否している。

この事が椎那の傷ついた心を更に、殺した。



━━━━━━━━━━━
そして椎那は今…飛鳥の大学前にいる。

なんの躊躇もなく、大学内に入る。
そして講義中にも関わらず、講義室に入ったのだ。
「あれ、誰?」
「椎那……?」
「椎那ちゃん、なんで……!?」

「君、なんだね?
部外者は立ち入り禁止だ!早く出なさい!!」

教授の言葉が全く耳に入っていない、椎那。
講義室内を見渡し、飛鳥を見つけた。
そして、飛鳥の元にゆっくり向かっていく。

飛鳥の前に立つと、折り畳みナイフを机に静かに置いた。

「椎那…?どうし━━━━━」
「飛鳥………こ…れ……」
飛鳥達が、ナイフを見て動揺する。

「飛鳥くん………私を…」
「し…いな……」


「私を…殺して……?」
< 85 / 90 >

この作品をシェア

pagetop