強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
恋の始まる場所
 ――そして、翌朝。


「まだ怒っているのか? 謝っただろう?」

 黙々と朝食を共にしながら、目の前のケントが呆れたように言ってくる。

 そんな様子がさらに怒りを買っているというのが分からないんだろうか?


 今朝、目が覚めたら私は彼の腕の中にいた。

 備え付けのソファーは小さくて、私ですら寝れそうにない。
 だから仕方なくキングサイズのベッドの端っこで眠っていたはずなんだけど……。


 朝になったら二人でベッドの真ん中にいて、私はケントの腕に抱き込まれている状態だった。


 でもそれだけならここまで怒らない。
 寝ている間の寝相なんて分からないし、私から彼の方に近づいてしまったのかも知れない。

 だから怒ったりはしないけど、早々に腕の中から抜け出そうとした。

 なのに……。


 朝が弱くて寝ぼけていたケントは、抜け出そうとした私をギュッと抱き込み、あろうことか服の中に手を入れて来たんだ。

 素肌に直接触れる男性らしい硬い手が、腰の辺りを撫でてゾクゾクした。


 寝ぼけているとはいえ、昨日抱かないと約束したばかりだというのに。

 怒りに任せて散々叫び暴れて、やっと離してもらえたんだ。


 朝から疲労感でいっぱいになった。
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