「ごめんねー」
 ノエルは二つの手のひらを顔の前で合わせた。
「リーンは純粋に作品を楽しみたいんだろうな、と思っていたし。翻訳もしたいと言っていたから、本当に言うつもりもなかったの。内緒にしておくっていうわけじゃなくて、知らない方がいいかな、と思っていたから」
 ノエルの言いたいことはなんとなくわかるし、ノエルなりに気を遣っていてくれたこともわかる。

「でもね。アディ先生がね、リーンの書いた月雲のポップを見て、大喜びだったの。大絶賛だったの」
 そう言ってもらえるのは嬉しい。
「それで、早速で悪いんだけれど。次の休みの日、アディ先生と会わない?」

 やはり、夢の中なのだろうか。もう一度カップを手にして、ゆっくりと口元に運んだ。熱い液体が通り抜ける。この感覚は、きっと現実なのだろう。

「何も予定はありませんので」