【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「本当に、アディとノエルちゃんに良い友達ができてよかったわ」
 なぜかシエルが目尻に涙をためて喜んでいた。

「お母様、喜びすぎです」

「だってぇ。あなたには友達ができないんじゃないかって思っていたから」

「どういう意味ですか?」

「そのまんまの意味よ」
 シエラは頭を左側に倒して口角をあげた。これは、妖艶な笑みというやつではないか。

「私の方こそ、こんな素敵な出会いをありがとうございます」
 二人の母娘喧嘩の仲裁のために、アイリーンが頭を下げた。

「そうそうアイリーンちゃん。あなた、アディのことが気にならないのかしら?」
 シエラに問われ、アイリーンは視線をアディに向けた。
「何のことですか? 憧れの先生、という意味ではすごく気になっています。しかも、とても素敵な方で。アディ先生に微笑まれたら、みんな心を奪われますよ」

「お母様、リーンはこういう子です」

「そうなのね。イブちゃんが気になっているっていうのもわかる気がする」
 今、ノエルにとって聞き捨てならない人物の名前が登場したような気がする。アイリーンに視線を移すと、彼女はアディと月雲の新装版に載せる絵について相談を始めていた。
 アイリーンは何にでも一生懸命だ。アスカリッドに留学しているから、というのもあるだろうけど。学院の勉強はもちろん、文芸部もそう。ずるずるっと引き込まれて本人が望んだわけでもない生徒会の仕事も。そして今新しい仕事を始めようとしている。
 大丈夫かなぁ、とノエルは少し心配になった。
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