「遅い」
 一室に女性の声が響いた。彼女の名は、ユミエーラ。デオンティとイブライムの母親。つまり、現国王の正妃。

「あらあら、ユミちゃん。そんな怖い顔をしないの。かわいそうに、怯えちゃっているじゃないの」
 ユミエーラの向かい側にゆったりと座っているのは、シエラ。ノエルの母親。つまり、側妃。その彼女を、ユミエーラはじっと見つめるも。
「だって、イブのデート話なんて、面白いじゃないの」
 言い、笑う。

「本当よね。まさかイブちゃんが、リーンちゃんをデートに誘うとは思ってもいなかったわ。しかも今日は学院のパーティがある日でしょ。何もこんな日に誘わなくても」
 右手をゆるく握って、その上に頬を落としているシエラも楽しそうに笑う。
「本当、リーンちゃんって可愛らしい子だったわ」

「ちょっと、シエラ。あなた、会ったことがあるの?」