一心不乱にノートにアイディアを描き出していたら、アデライードに名前を呼ばれたことにも気づかなかった。
「アイリーン」
 いつもと違う呼び方で、そして声色で呼ばれて、はっと顔をあげる。彼女の向かい側に座る。

「何をそんなに一生懸命描いているんだい?」
 頬杖をつき、顔中にニコニコと微笑みを浮かべたアデライードがいた。人相をごまかすためか、サングラスをかけているようだ。

「終わりましたか?」
 アイリーンも負けずに笑顔を浮かべた。
「おかげさまで、大反響。ありがとう。そして、それ、見せてもらえたら嬉しいな」
 キャラ変のアデライードの破壊力は半端ない。いつもなら「え、無理無理」と三回断ってから、相手にしぶしぶ手渡していたアイリーンの妄想ノート。今日は何かの催眠術にかけられたかのようにすんなりと手渡してしまった。
 アイリーンは、アデライードがノートを見ている間、すっかり温くなってしまったその液体をゆっくりと喉元に流し込んだ。その液体の甘ったるさが、喉元に引っかかっている。