両国の協定が結ばれ交流が行われてはいるが、それも盛んにではなく、隠れてといった感じのもののほうが多い。まだ両国における関係は、政治的な背景が絡んでいるか、情熱的な愛情が絡んでいるかのどちらかだろう。気兼ねなく、という関係までには至っていない。

「はい。簡単な日常会話と、読むことと聞くことはなんとかできるようになりました」

「そうですか。それなら、少し安心ですね。今までの留学制度が使われなかったのも、実はその言葉の壁があると思うのです」
 ランスロットの意見は正しい。

「はい、おっしゃる通りです。ですから、留学から戻ってきましたら、このプーランジェでアスカリッドの言語や文化を普及させていきたいと思っています」
 うんうん、とボイド公爵は頷きながら娘の話を聞いている。だが、何度も記載するが、アイリーンが普及させる文化はビーエルが基になるものだ。
「リーンのアスカリッド語は堪能だよ。毎日あちらの本を読んでいるようだしね。戻ってきたら、是非私の秘書になってもらいたいものだね」
 毎日読んでいるあちらの本は、あちらの本ですが。アイリーンは上品に笑みを浮かべ、誤魔化している。

「どうだい、ランス。リーン嬢はとても聡明な女性だ。この際だから、婚約してはどうかな?」

「父上、寝言は寝てから言ってください」

「レイ。残念ながら私も君とは近い親戚になりたくないな」

「レイ小父様、私にはもったいないお話でございます」
 と三人三様で遠回しに断ってみたものの。

「リーン嬢も返事は急がないから。前向きに考えてみてね」という三人の話を聞いていなかったかのような返事が返ってきた。