【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 素敵な笑みを浮かべて、さらりとそんなことを言う。その言葉を言う相手を間違っていますよ、とアイリーンは言いたい。近くに黒髪眼鏡がいないかな、と首を振る。だが、残念ながら見当たらない。
 こんなとき、どのような行動をするのが正解なのだろう。だが、気の利いた解答が見つからず。
「ありがとうございます、イブライム様」
 と言ってみた。アイリーンが両手で抱えていたその荷物も、イブライムの手にかかれば片手で余裕らしい。まあ、重くはないものだから。

「イブでいい」

 という言葉が戻ってきた。

「はい? ええと、何のことでしょう?」

「オレの呼び方だ。愛称で問題ない」

「いえ、恐れ多いです。イブライム様はこの国の王子殿下でいらっしゃいますよね」

「ノエルもこの国の王女だが? ノエルは愛称で呼ぶのに、オレのことは呼べないと?」
 そう言われてしまうと、反論できない。男女の違いというのもあるのだが、それは説得力に欠ける。

「では、イブ様と呼ばせていただきます」

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