彷徨う私は闇夜の花に囚われて



そういうところが好きだったから嫌いになるのが難しくて。


ちぐはぐな気持ちで心が裂けそうな錯覚を覚えるの。


「俺はましろをずっと怖がらせていたんだね。ごめんね」


最後の最後まで、私には優しいままで接してくれる。


……ほんとに、なにも知らなければずっと好きでいられたのに。


この人がいいって。ずっと一緒にいたいって。


心の底から自然と思えていたはずなのに。


知ってしまったから。私の心が変わってしまったから。


「紅バラさんは私の弱い部分も受け入れてくれたのに、私はそれができなくてごめんなさい……」


なるべく私を許さないで。


じゃないと私は簡単に前へ進んでしまいそうだから。


紅バラさんが苦しんで、私だけが縛りから解放されて楽になれる。


そんなのが許されるわけもないから。


「紅バラさん、さようなら」


どうか、今度こそ最愛の人と結ばれて。


多くの幸が紅バラさんに訪れますように……。


もつれると思っていた別れ話は意外にもすんなりと片付いて。


最後にもう少しだけ話していたかったな、なんて。



神様への願い事と自分勝手な心残りが、長いこと胸の中に居座り続けていた。



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