走り去った父を、黙って見送ることしかできなかった。

(……私、やっぱり嫌われているんじゃ)

 不意にそんな想像が頭に浮かぶ。 

「何、細かいことは気にしなくていいんだ。我を連れて、屋敷に戻るがいい」

 屋敷に戻ろうとしたら、慌てた様子で走って来たニコラ達と顔を合わせることになった。

「わわ、なんだよ。でっかい猫だな!」

 と、ニコラのスカートの陰に隠れたのがカーク。

「ミリエラ様、食べられたりはしませんか……?」

 と、腰の剣に手をかけたのがオーランドであった。

「ふたりとも、馬鹿か。我は、風の精霊。人間を食べたりなどしない」

 ミリエラの隣にいるエリアスの尾が、ぶわっと空気をはらんだ。ちょっとイラっとしたらしい。

 そんな中、動じなかったのはニコラだった。

「まぁ、あなたはミリエラ様と契約をした風の精霊なのですね」

「そうだ。風の精霊王である」

「まあ、素晴らしい。では、ミリエラ様のお部屋にどうぞ」