消えた未来
第十話
 織部さんたちに病気のことを話してから、今まで通りに接してくれなくなることは、なんとなく感じていた。

 経験上知っていたし、織部さんならそうなると思っていた。

 現に、今朝は俺と目を合わせようとしなかった。

「久我君、一緒にお昼食べよう」

 だけど、今、振り返った織部さんは眩しい笑顔だ。

「……なんで?」

 その方向に変わるとは思っていなくて、不審者を見るような目になってしまった。

 声も冷たく感じる。

 織部さんを怖がらせたかと思ったが、どうやらそうでもなさそうだ。

 普通に笑っている。

「仲のいい人とご飯を食べるのは、普通だよ?」

 だとしても、このタイミングで俺を誘う理由がわからない。

 その理論でいけば、八神さんと食べればいい話だ。

 目的が見えない。

「それに、少しでもたくさん、久我君との思い出を作りたくて」

 織部さんは周りに気を使って、声のボリュームを下げた。

 なるほど、そっちが本当の理由か。

 理解はしたけど、それと誘いを受けるのは別の話だ。

「そんな気、使わなくていいから」

 あからさまにいなくなることを意識されると、いい気しないのは当然だ。

 さっきよりも不機嫌そうな声になり、織部さんは戸惑いの表情を見せる。
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