消えた未来
 軽く言われてしまうと、思い悩んでいたのがバカみたいに思えてしまう。

 だけど、それを鵜呑みにはできなかった。星那にもないから安心だ、なんて思えない。

 現に、久我君にはあるように見えた。というか、他人にあんなふうに言えるってことは、自分ができてるってことだと思う。

「真央は真面目だね」

 星那はまだ理解できないという顔をしている。あまり真剣に取られても困るから、私は笑って誤魔化した。

  ◆

 いつものようにホームルームが終わると、すぐに教室を出る。もはや、歩きなれた道はなにも感じない。

「この前の桜の花道、綺麗だったな」

 久我君と話したときの景色を思い返すと、またあの場所に行きたくなる。

 といっても、あの日はただ久我君について歩いていたから、あの場所への行き方を覚えていなくて、行きたくても行けないけど。

 どんな道を通ったのかくらいは覚えておけばよかったと思っていたら、目の前にサッカーボールが転がってきた。立ち止まってあたりを見渡すと、小学生が私のほうに走ってくる。

 ボールを拾い上げ、その子が来るのを待つ。

「ありがとう、お姉さん」
「どういたしまして」

 少年がお礼を言うから、言葉とともにボールを渡す。
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