消えた未来
「どこの家族も大変なんだな」

 久我君はどこか興味なさそうに言った。

 そして、次の言葉はなかった。

「それだけ?」

 もっとなにか言ってくれると思っていたから、自然とそう言っていた。

 久我君は私が言っている意味がわからないと言わんばかりに、顔を顰めた。

「織部さんは、なにを求めてたんだよ」

 解決策を教えてほしいと思っていたけど、こうしてはっきり目的を聞かれてしまうと、答えられなかった。

 改めて考えると、甘えているとしか思えない。

 わかっていながら言うなんて、できない。

「家族の問題は、他人が口出しできることじゃない。余計にややこしくなるだけだから。どんなにしんどくても、自分でぶつかるしかないよ」

 なんだかんだ、久我君はヒントを示してくれた。

 ありがたかったのと同時に、ここまで気付かれていることに恥ずかしく思った。

 でも、今更かもしれない。

 そう思ったら、躊躇っていることのほうがバカらしく思えてきた。

「お母さんたちが私の話を聞いてくれないことがほとんどなんだけど、そういうときはどうすればいいの?」

 私が急に積極的に相談を始めたから、久我君は戸惑いを見せる。

 目が、それくらい自分で考えたらどうだと言っているのがわかる。
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