消えた未来
 ですよね、と思いながら目を逸らす。

「織部さんが勝手に諦めて、決めつけてるだけじゃないの」

 口調からも、面倒に思っているのが伝わってくる。

 申し訳ないとは思うけど、ここまでくれば納得いくまで話させてもらおう。

「最近は、挨拶しても返ってこないのが当たり前になりつつあるんだけど……」
「でも、お姉さんがいるときはそうじゃなかった」

 久我君のはっきりとした口調での確認に、小さく頷く。

「お姉さんに相談してみたら?」
「お姉ちゃんに迷惑かけたくない」

 それに、お姉ちゃんと比べられて、自分が劣っているということを、知られたくなかった。

「そんなこと言ってたら、一生変わらないと思うけど」

 私の態度に呆れて、語尾に苛立ちが隠れているのがわかる。

 私だって、久我君の立場だったらそうなると思う。

 でも。

「久我君、いつだって正論が正しいわけじゃないと思う。それができないから、苦しいの」

 少し喧嘩を売るような言い方になってしまって、すぐに後悔をした。

 久我君と喧嘩になんてなったら、私が負けるのは目に見えている。

「知ってる」

 だけど、久我君は今にも泣きそうなくらい切ない表情で言った。
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