消えた未来
 だけど、久我君の従姉だと思うと、怒られるのも、そう言われるのも当然だと思った。

 大切な人の触れられたくないところを、他人に土足で踏み荒らすようなされていると知って、誰だっていい気はしないだろう。

「ごめん、なさい……」

 私は謝ることしかできなかった。

「……蘭子、いいよ」

 空気が重たくなったところで、久我君が言った。

 先生は納得のいっていない顔をしている。

「これだけ聞いておいて、気にするなってのは無理な話だから」

 久我君にそう言わせてしまったのも申しわけなくて、私は顔が上げられなくなった。

「八神さんも、そうだろ?」

 久我君は星那に話しかけたけど、星那は答えなかった。

 きっと、図星だったんだと思う。

「俺は、興味本位でもなんでもいい。ただ、勝手にいろいろ思われるほうが嫌だから」

 久我君がはっきりとされたくないことを言って、それをしてしまったことに対する後悔が大きくなる。

「……織部さんが想像した通りだよ」

 久我君の声が小さくなる。

 恐る恐る顔を上げると、久我君は泣きそうな表情をしていた。

 視線を落としていて、目が合わない。

「俺……二十歳まで生きられるかわからないって言われてるんだ」

 私も星那も、なにも言えなかった。
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