消えた未来
第八話
  ◆

 病気だとわかったのは、小学四年生の秋だった。

 当時、夏ごろに両親が離婚した。

 俺は母さんについて行くことになって、まず最初に言われた。

「ごめんね、侑生。これからはお母さんと二人になるの。今までより大変な思いさせるかもしれないけど、一緒に頑張ろうね」

 そのときの、母さんのつらそうな顔を見て、子供ながらに、母さんを困らせないようにしようと思った。

 子供というのは単純で、親を困らせないというのは、わがままを言わないことだと思っていた。

 だから俺は、少しずつ、我慢をするようになった。

 体調不良を黙っていたのも、そのうちの一つだった。

 夏の暑さが消えていったころ、俺は腹の痛みに耐えるようになっていた。

 どれだけ痛くても、母さんには言わなかったし、学校を休むこともなかった。

 そして、一ヶ月くらい経ってから、限界を迎えた俺は、学校で倒れた。

 腹は痛いわ、母さんに迷惑かけるわで、俺は保健室のベッドの上で声を殺して泣いた。

 でも、先生も母さんも、痛くて泣いているんだと勘違いして、そのまま病院に連れて行かれた。

 診察を受けて、言われた。

「二十歳まで生きられるか、わかりません」

 小学四年の俺には、その意味がわからなかった。
< 78 / 165 >

この作品をシェア

pagetop