消えた未来
 それからなにをしたいか考えたのはいいが、なかなか思いつかなかった。

 店の手伝いができているだけで十分だったけど、なにもしなかったら叔父さんにまた言われると思ったから、必死に探した。

 でも、見つからなかった。

 叔父さんが言ったみたいに、知らないことが多いから、なにがしたいのかわからないのかもしれないと思った。

 そこから、少しでも行ってみたい、見てみたい、やってみたいと思うことはなんでもやった。

 映画を観に行ったり、ゲーセンで遊んだり、水族館に行ったり。

 でも、どれもそこまで楽しくなかった。

 よくよく考えてみると、すべて一人でやっていて、だから楽しくなかったんだと思った。

 俺は、誰かとなにかをしているほうが、好きみたいだった。

 それに気付いてからは、俺が稼いだ金は、誰かのために使うか、貯めるようになった。

 唯一、自分のために使ったのは、髪を染めることだけだ。

 そのときやっていたドラマに影響されて、染めてみたくなった。

 当然のように教師には怒られたけど、俺としては満足だった。

 それのせいで悪い噂が流れて、人が寄り付かなくなったのも、俺にとっては好都合だった。

 人との繋がりを求めていても、もう、学校での繋がりはいらなかった。
< 88 / 165 >

この作品をシェア

pagetop