消えた未来
 観念したのか、ため息をつく。

「いろいろ変なことを考えられるのも、しつこくされるのも嫌だっただけ」

 それはさっきも聞いた。

「それだけで、秘密を言おうって思うかな。誰にも知られたくないから、隠してきたんだよね」

 同じく納得できない星那は、まるで事情聴取のように質問を重ねる。

「だからって隠し通しても、二人は聞こうとするだろ。それに、織部さんは誰かに言いふらすような人とは思えないから、話してもいいと思って」

 そう思ってくれたのは、素直に嬉しい。

 でも、星那のことは言わなかったから、星那は不満そうだ。

「まあ、態度は変わりそうだけど」

 付け加えた言葉に苦笑したけど、それも星那のことじゃないから、ますます不機嫌になる。

「私は?」

 堪えきれなくなって、不機嫌のまま言った。

「態度が変わらないのは、今わかった」

 意地の悪い顔をしているから、予想通りに星那は久我君を睨む。

 だけど、久我君はまったく気にしない。

「もういいだろ。俺の話は終わり」

 久我君はそう言うと、席を立ち、保健室を出ていった。

 先生と星那と私だけになって、無言が続く。

 先生は、久我君が病気のことを話すのは反対していたから、余計に気まずかった。
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