海とメロンパンと恋
戸惑う気持ち



「お〜い、胡桃しっかりしろよ」


「は〜い」


お兄ちゃんの選んでくれたワインが美味しすぎて
ついつい飲み過ぎた私は

雲の上を歩いているかのように上機嫌だ


お兄ちゃんの腕にぶら下がって
体重をかけて歩くのがやっと


「なんで今日に限って酔っ払うんだ」


呆れ顔のお兄ちゃんは「仕方ない」と呟いたあとで


「キャ」


千鳥足の私を抱き上げた


「掴まってろよ」


「は〜い」


「チッ」


お兄ちゃんの首に手を回して
ピタリと寄り添う


「チッ、暑い」


文句は多いけれど
抱っこしてくれるあたり

妹の私には極甘のお兄ちゃん


「お兄ちゃ〜ん」


「ん?」


「胡桃のお兄ちゃんでいてくれて
ありがとうね」


「あぁ」


「だ〜い好き」


「はいはい」


「はい、は一回っ」


「ハハ」


気持ちよく酔っ払ったうえに
歩かなくて良いなんて


「天国?」


「突然、頭沸いたのか」


「もぉー、やっぱ優しくないっ」


「そーだ、俺は優しくねぇ」


「「ハハハ」」


明日四国へ帰ることもあってか
お兄ちゃんとの会話は尽きなくて


泣けてきた


「おい、胡桃、どうした」


私の涙に気づいたお兄ちゃんは
分かりやすく焦り始めて


「だって、楽しい」


「・・・ハァ??」


「お兄ちゃんと居ると楽しい」


「ハハ、そうだろう」


楽しくて泣いている理由を聞いて
「やっぱ胡桃は変だ」なんて大笑いしたところで




お兄ちゃんの足が止まった






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