海とメロンパンと恋
再会の夏休み



あれから・・・


携帯電話の電源は入れていない


友達は近所だから
「携帯電話早く直してね」なんて
優しいことを言って会いに来てくれるから問題ないし


お兄ちゃんからは毎日家に電話がかかってくるようになって


(胡桃が家に居ることが分かって
これは一石二鳥かも)


なんて過保護発言をされる始末


「どうしてパン屋を継ぐ話をしなかったの?」


責めるように口にした時は


(胡桃の人生、これから気が遠くなるほど長いんだぞ?
そう思えば、外で働く数年なんてちっぽけなものさ)


お兄ちゃんなりの持論が返ってきた

(どうしても無理なら、パン屋には
いつでもなれるんだから
社会人やってみろよ)

「・・・分かった」

そんな毎日を過ごしているうちに
夏休みに突入していて


お兄ちゃんからは
(明日来るか?)と連日同じ質問をされるようになった


それに根負けした私は
予定より早くお兄ちゃんの家へ行くことになった


「胡桃、電源入れてなくても
携帯電話は持って行きなさい」


「・・・うん」


来春の同居に向けて
お兄ちゃんの家に足りない
調理器具を買い込んでいたお母さんは


「今回は柚真が迎えに来てくれるんだから
大荷物でも平気でしょ」


何故かたこ焼き器まで買っていた




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