宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
驚くことばかり


午後になってから陸の秘書から聞いていた六本木にある高層ホテルに行った。

チェックインすると、見晴らしのいい部屋に案内される。

すぐに部屋のチャイムが鳴り、陸の秘書がやって来た。



「初めまして、奥様。水杉社長の秘書を勤めさせていただいております、風間と申します。」


40そこそこだろうか、落ち着いた雰囲気の男性だ。渋い紺のスーツがサマになっている。


「一花と申します。色々ご連絡ありがとうございました。」

何度か連絡を貰っているうちに、陸本人よりもこの風間という秘書の方が話し易く感じた。

実際に会ってみると、やはり物腰も口調も柔らかい。
この秘書が側にいて、陸の冷淡さを補っているのかもしれない。

「6時に開宴でございますので、それまに着替えをなさってお部屋でお待ち下さい。」

「わかりました。」

「間に合う時間に、社長がお迎えに来られるそうです。」
「ご本人が?」

驚いて、大きな声が出てしまった。

「勿論、奥様のエスコートですから。」

クスリと秘書の風間は笑っていた。

『しまった!』

一花は焦った。秘書は、どこまで知っているんだろう。

この半年で、数回しか会った事が無いなんて…。

形だけの妻だなんて…。バレてもいいのだろうか?


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