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手を振りながらマンションのエレベーターに乗り込んだ茉緒を見送り、ひとつため息をついて歩き出す。
キスで誤魔化してもそれに騙されるほど茉緒も鈍感じゃないだろう。
なにも言わずにいてくれた茉緒に感謝しつつ、酔った頭が頭痛を訴えてきて頭の痛い案件にどうしたものかとこめかみを押さえた。
俺は陸翔がニューヨークから帰ってきた時のことを思い出していた。
三人で食事がてら飲み早々に解散した後。
なんとなく寝付けずに水を飲もうとリビングに行くと陸翔がソファーに座っていた。
「なんだ、寝てなかったのか」
「ああ智成。ちょうどよかった、ちょっと」
陸翔も水を飲んでいたようでコップがテーブルの上に置かれていた。
手招きされ俺も一杯水を飲むと陸翔の隣に座る。
何か考え込んでいた陸翔がしばしの沈黙の後俺を見た。
「お前ら、俺のいない間になんかあっただろ」
すべてを見透かすような目に俺は一瞬息を吞んだがバレるのは時間の問題だと思っていたから落ち着いていた。
「ああ、悪い陸翔。お前の心配した通りになった」
「っ、か~っ、失敗した。もっと早くに気づいておけばよかった」
俺らが付き合いだしたとはっきりとわかって陸翔は頭をガシガシとかき後悔している。