キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です

鬼の居ぬま間に

***


翌々日のバイトの日、店に顔を出した寛子さんにお礼を言った。
「寛子さんありがとうございました」
「逢えてよかったでしょ?」
「はい」
智成のうちにお泊りした次の日、日曜だというのに仕事だと言う智成はわざわざスケジュールを調整して午後出勤にしてくれたおかげで午前中ゆっくり恋人時間を楽しむことができた。
寂しいことも不安なこともふたりのこれからのこともたくさん話してお互いの気持ちをもう一度確かめ合って、私は暫く逢えなくても智成のことを信じようと心に誓った。
なによりも智成からプロポーズされて私は舞い上がるほど嬉しかった。
『俺は茉緒とこれから先もずっと一緒にいたいと思ってる』
『それって……』
ふいに真剣になった智成は私の左手を取り薬指にキスをした。
『まだ指輪は用意できてないけど、ここ、予約しとく。茉緒には苦労掛けるかもしれないけど俺と人生を共にしてほしい』
『本当に? 私でいいの?』
『茉緒じゃなきゃダメなんだ。愛している茉緒、俺と結婚してくれるよな?』
『うれしい……! よろしくお願いします!』
智成に抱きついてたくさんキスをして幸せに浸った。
ついあのときのことを思い出してにやけてしまう。
そんな私を面白そうに見つめた寛子さんが覗き込むように私に質問する。
「なんか、いいことあった?」
「うふふふふ、実は、プロポーズされたんです」
「え!? そうなの? おめでとう!」
手放しで喜んでくれる寛子さんに照れながらその時のことを軽く話した。
うんうんと嬉しそうに相槌を打ってくれた寛子さんに居住まいをただして私はもう一度お礼を言った。
「寛子さんが逢いに行けばって言ってくれなかったら、私はまだひとりで悩んでたと思います。協力してくれてありがとうございました」
「ううん、私はたまたま出かける予定があってついでみたいに提案しただけだから。でもよかった。結婚の約束までしたんだもん陸翔さんもこれで安心して、お付き合い許してくれるんじゃない?」
「それが……」

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