「たっだいま~、お、いい匂い」
「おかえりお兄ちゃん」
「ん? どうした茉緒、まだ調子悪いか?」
覇気のない様子にお兄ちゃんはいち早く気づいて私の顔色を伺う。
「大丈夫、ご飯ちょうどできたよ、食べよ」
「お、おう」
有川さんと別れた後、いつもの習慣というものは有難いもので、ほとんど呆然としたまま私はお兄ちゃんと暮らす家に帰り長い時間ぼーっとしてたにも関わらずいつもの時間に夕食を作っていた。
お兄ちゃんに心配かけないよう笑顔を向けて何でもないように食事を始めた。
「智成との熱ーい夜はどうだった?」
「あーうん。智成疲れてたみたいですぐ寝ちゃった」
「ふーん。で、どうする? 智成帰ってきたら同棲始めるか? 俺はいつ出てってもらってもいいぞ」
「え? う、ん。お兄ちゃんあんなに反対してたのに随分乗り気だね」
「あ、まあ、今まで邪魔ばっかしたからな、すまん」
「別に、怒ってはないよ」
あんなに反対してたのにころっと態度を変えるお兄ちゃんに相変わらず調子がいいなと笑ってため息が出た。
このタイミングで素直に喜べないのが悲しい。
「ねえ、お兄ちゃん。智成が過労で倒れたって知ってた?」
「は? ああ……」
気まずそうな顔をするお兄ちゃんは知ってたようだ。知らなかったのは私だけ? すごくショックだ。
「……知ってたんだ。智成から聞いたの?」
「いや、俺も今日会社に行って知ったんだ。茉緒は誰から聞いたんだ?」
「あ~、うん。有川さんに」
「有川? ほかになにか言われなかったか?」
急に眉間にしわを寄せるお兄ちゃんに慌てて首を横に振った。
いろいろ言われたけど、そこは問題じゃない。