キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
私は縮こまってる益木さんの気を引くようにその手を取った。
「益木さんはまだお兄ちゃんのことが信じられませんか?」
「いえ、そんなことは……」
もじもじする益木さんはお兄ちゃんをチラチラ見ては気にしてる様子。
実はとっくに益木さんの心は決まってるんじゃないかなと思った。
ほんのちょっとの勇気が欲しくて私に会いたかったのかな? と都合のいい考えが過る。
「益木さん、お兄ちゃんは一途だし優しいしちょっと過保護だけど頼りになるし、妹の私が言うのもなんだけどお勧めですよ? それに……」
もうひと押しとばかりにお兄ちゃんのいいところをアピールし、私の願望も付け加えておく。
「私、兄妹はお兄ちゃんしかいないから、お姉ちゃんが欲しかったんです。お姉ちゃんができたら一緒に買い物したり、スイーツ巡りしたり、女子トークしたり……」
ここはこそっと、と思って口に手を添えて寄っていくと、意を酌んでくれた益木さんが少しかがんで耳を傾けてくれた。
「夫の愚痴を言い合ったり」
益木さんのぱちくりさせた目と合うとくすっと笑い合った。
「女子同士でしかできないことたくさんしたいな~と思って。益木さんがお義姉さんだったらいいのになって思います。それとは別に、今日はこの子の服を一緒に選んでくれたら嬉しいな」
お腹を撫でて幸せいっぱいに笑顔を向けると、益木さんは息をつめたように私を見つめた。
「わ、私も、弟しかいなかったから妹が欲しいって思ってました」
ぎゅっと私の両手を掴んだ益木さんはお兄ちゃんの方に振り向いた。
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