鬼麟

2.拒絶反応

 目が覚め、未だはっきりと覚醒しないままに身体を起こす。寝ぼけ眼を擦りつつ、落ちてくる髪を払い除け、眼前に広がる段ボールに辟易とする。
 一昨日引っ越しが済んだばかりで、段ボールとベッドだけしかない部屋は閑散としていて、窓から射し込む朝日だけが温もりをくれる。
 座ったまま、しばらくぼーっとしてばらばらになった記憶に浸り整理する。
 思えば本当に最悪だった。まさか初日早々に目を付けられるとは思ってもいなかったが、かといって自身の行動も振り返れば当然の結果とも言えようもの。怪しさに輪をかけた行動を取ってしまった節もあり、やるせなさに溜息すら口から漏れ出る。
 特に、押し倒された時は危なかった。ウィッグで隠す本来の髪がずり落ちて来ないか、内心冷や冷やしたもので、生きた心地がしなかったともいえる。
 再度深く吐いた溜息が、静か過ぎる部屋に溶けていく。
 学校に、行きたくない。
 私の胸中を占めるのは二日目早々に既に登校拒否に陥ろうとする愚考であり、そもそも学校ではなく、単に昨日の人達に会いたくないというだけだ。
 埒の明かない悶々とした思いを抱いきつつ、取り敢えずといった感じにベッドから降りようとする。軋むスプリングの音と、はらりと落ちた金色が視界へと入った。考えるまでもなく、それは自分の髪だ。
 はたと思い出された、綺麗な金色。確か、修人も金髪であったと、脳裏に浮かぶ綺麗な金色をした修人の細められた赤。
 以前の自分と同じ髪色と瞳の色は胡乱げな態度と裏腹に、内包する熱はあまりにもぎらついていた。
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