零士さんとのデートから数日後、私は古手川さんと会っていた。

「自分のブランドが立ち上がるのか。
そりゃ、僕の手伝いとかできないよな」

口もとに笑みを浮かべ、彼がカップを口に運ぶ。
改めて来た店では、忙しく数人が働いている。
その横、事務所の一角に儲けられた応接スペースで今日は話していた。
あの日、寝落ちてしまったソファーでの話は、少し複雑だ。

「もう、そのために会社を買ったとかわけわかんないですよ」

私も苦笑いでコーヒーを飲む。

「鴇田はいいな、恵まれていて」

なんの気なしのひと言だったがそれは私のコンプレックスを刺激し、胸に鋭い針を打ち込んだ。

「でも、実力のないものは採用しないと言われましたし、採用されても不採算事業は即刻カットとまで言われたんですよ?」

冗談めかしたが、笑顔が引き攣らないか気を遣う。
古手川さんはこんな、私が傷つくとわかっていてああいうことを言う人だっただろうか。

「わるい。
……僕はいったい、なにを言ってるんだろうな?」

嘲笑するかのように彼は小さく笑った。
その顔に胸がざわざわするのはなんでだろう?

「開店準備で忙しかったはずですし、お疲れなのでは?」

「……そう、かもな」

ぽそっと言ったきり、古手川さんは黙っている。