今さら好きだと言いだせない
§1.営業部の先輩
***

「はい、これ」


 会社のパソコン画面をじっと見つめる私のデスクに、突然小さな袋に入ったお菓子がポンと置かれた。
 置いたのは、入社時に同じ部署に配属になった同期の芹沢 侑吾(せりざわ ゆうご)だ。

 私、町宮 南帆(まちみや なほ)は食品メーカーである㈱ネクストスターフーズの企画業務部で働いている。
 今年で勤続四年目で、二十六歳になった。


「え、私にくれるの?」

「昨日、営業の山本さんと外出してて帰りに菓子博に寄ったから買った。町宮はそういうの好きだろ?」


 渡された小袋のパッケージに目をやれば、それはチョコフロランタンだった。
 何種類かのナッツが練りこまれていてとてもおいしそうで、今すぐ袋を開けて口の中に入れそうになったが、まだ午前中なので休憩までグッと我慢する。
 お昼ご飯のあとのデザートとしていただこう。そんなふうに考えを巡らせると、自然と口元が(ほころ)んだ。


「ありがとう! めちゃくちゃうれしい」

「そりゃよかった」


 小さなお菓子ひとつで喜ぶ私が面白いとばかりに、芹沢くんがフフッと肩を揺らして笑う。

 くっきりとしたフェイスラインに、奥二重の瞳、スッと通った鼻梁……彼はすごく整った顔をしている。
 ほんのり茶色がかった髪をワックスでゆるく遊ばせていて、高身長で肩幅も広く、いつ見てもカッコいい。

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