今さら好きだと言いだせない
§7.一夜明けて
***

 翌日の日曜の朝、先に目を覚ました芹沢くんはキッチンにいて、簡単な朝食なら準備できるから一緒に食べるかと聞いてくれた。でも私は遠慮がちに首を横に振った。
 理由はただひとつ、気まずいからだ。

 昨夜の行為が頭をよぎって恥ずかしいのもあるけれど、どう接したらいいかわからず、彼の顔色ばかりうかがってしまう。

 昨夜は不思議な魔法がかかってベッドを共にしてしまったが、芹沢くんは一夜明けた今、どう思っているのだろう?
 ついつい手を出して失敗した、と後悔しているかもしれない。
 もし彼がそんな感情を少しでも顔に出しているのがわかれば、さすがに私はショックで立ち直れない。それもあって彼の顔をまともに見れずにいた。

 こんなに気まずいなら、朝早く起きて、書置きでも残して勝手に帰れば良かった。魔法が解ける前に。

 シャワーを使ってもいいと言ってくれたけれど、洗面所で洗顔と歯磨きをさせてもらうだけにした。
 お風呂は帰ったあとに自宅でゆっくりお湯に浸かってリラックスしたい。

 顔を洗う前に鏡の中の自分を見て驚いた。当然のことながらメイクはなにも残っておらず、泣いたのが原因でまぶたが赤く腫れている。
 こんなボロボロの顔を芹沢くんに見せていたなんて信じられない。

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