若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
二章

もうとっくに捨てられているだろうと思っていたのに、蓮さんは十年以上も前に贈ったあのボールペンを今も使ってくれていた。

渡瀬先輩と頻繁に食事に行っている様子に悲しくて仕方なかったというのに、それを知ってしまえば嬉しくてたまらなくなって、我ながら単純である。

帰宅して、ひとりで軽く夕飯を済ませ、広いリビングでソファーにちょこんと座り、ぼんやりテレビを見ていると、表参道のフレンチレストランが紹介された。

蓮さんとの食事はここが良いかもしれないと思わず笑みを浮かべたが、店内は上品でお洒落な雰囲気に満ち溢れていて、こんな場所に行ったら私は浮いてしまうかもと次第に苦笑いへと変わっていった。

画面に映っている食事を楽しんでいる人々もみんな品がある。

蓮さんならこの場にすんなり馴染めそうだなと彼がテーブルに着き優雅に食事する姿を想像すれば、その向かいに渡瀬先輩の姿が勝手に浮かび上がってくる。

自分の妄想をため息と共にかき消して、ゆっくりと壁掛け時計へ視線を上げた。

時刻は午後十時を過ぎたところ。蓮さんもさすがに夕食を済ませているだろう。

もしかして今日も渡瀬先輩と一緒だったりするのだろうか。

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