合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
17章

怒り(一)


 自分から考えて決めて誰かの顔色をうかがうこともなく何かをするということは、やはり楽しい。

 何かあった時は自分の責任にはなるが、それでもしっかり地に足を付けている気がする。

 そう考えると、今までどれだけ逃げてきたのか。

 今日のギルドでの収穫も大きかった。

 キースの婚約者になるなんてそんなことはまだ考えられないが、今日みたいにキースとどこかへ出かけたり書類整理をするのはいいなと思ってしまう。


「……まずいなぁ」


 そう、まずい。

 楽しくて、どんどんキースに惹ひかれている自分がいる。

 ありのままのキースは、私が初めに抱いた印象とは全くの逆だから。

 チャラチャラしていて女の子を取っ替え引っ替えなんていうのは、おそらくキースがそういう人物像をわざと作っていたのだと今なら分かる。

 彼は王弟殿下で、元より今の王と並んで王位継承者候補の一人だった。

 おそらく自分ではなく兄を王にするためにああいう行動をしていたのだろう。

 それほどまでに、兄のことを大切に思っていた。

 きっと私とミアとは違い、いい兄弟なのだ。
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