合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

魔物料理(八)


「そうね、せっかくだから一口食べましょう」


 アンジーさんとルカはコクコクと頷いた後、フォークでコカトリスの肉を刺す。

 二人ともこれが魔物の肉だということをすっかり忘れているようで、そのままアヒージョを口に入れた。


「何これ。これはなんの肉だった? 口に入れるとこの油? タレ? の匂いが口中に広がって、ピリリと後を引くこの味ー。やだ、お酒欲しい」

「お嬢様、すごいです。こんな美味しいもの、ルカは初めて食べました。辛いのに、すごくおいしいです」

「この油にパンを付けても美味しいのよ」


 どうやらアヒージョは成功のようだ。

 次は煮込みとスープの用意をしてから、残りのコカトリスの肉を焼いてしまおう。


「ルカ、これをみんなの元に届けてきて」

「はい、お嬢様」


 とりあえず、深皿六個分あるからしばらくは大丈夫だろう。


「アンジーさんは残りのコカトリスに塩だけ振って焼いてもらっていいですか? 皮を先に焼いて、パリパリになるまで焼いてしまって下さい。私は煮込みの料理に取りかかります」

「分かったわ」


 寸胴鍋に水と人参や白菜のような葉物を切って入れ、火にかける。

 残っている肉は二種類だ。

 そのうち、やや臭みのあり硬そうな肉を手に取る。

 このまま調理しても美味しくないだろうから、とりあえず肉をみじん切りにする。

 切った肉にすりおろしたショウガとネギ卵の黄身を入れ、塩とコショウを加えて混ぜればつみれの完成。

 そのつみれと少量のお酒を入れれば、つみれ汁の出来上がりだ。
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