合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

気づき(四)


「それにミア様なら、こーんなこと思いつきませんし、思いついたとしても来たがりませんよ」

「……うん、ごめんなさい。そしてありがとう」

「いいのよ、あたしも外見ばっかり褒めたから、いけなかったのよね。気分を悪くしたなら、謝るわ。ごめんなさい」

「いえ、違うんです。綺麗とか、可愛いとか、そういうのを言われ慣れてなくて」

「は? 世の中の男どもはどれだけ意気地なしなの」


 あり得ないとぶつぶつ言いながら、額を抑えている。

 社交界などでお世辞として言われたことは何度かあったが、心から言われた相手はおそらく一人だけ。

 そう思ったところで、キースの顔が思い浮かぶ。

 空に思い浮かべた顔を、急いで手でかき消す。


「ど、どうしたんですか、お嬢様」

「な、なんでもないの」


 さっきアンジーさんに言われて一つ気付いたことがある。

 この前、ミアが怒ったことだ。

 私はキースの勧めで褒めてみればと言われ、思わず外見だけを褒めてしまった。

 ミアが外見に自信があるのは知っている。

 しかしその外見も、ルカに言わせるとちゃんと努力して作られているらしい。

 ただ外見を褒めるだけでは、そこにある努力を無視されたような気になったのではないか。

 だから、ルカは怒った。

 そう考える方があっている気がする。
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