合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

目覚め(七)

 彼女は私付きの、侍女ルカだ。

 おそらく、今家には私より上の身分の者がいないのだろう。

 本来ならば馬車ごと転倒したため、お見舞どころではないはず。

 しかし、相手がグレンならば簡単に断れはしない。
 
 私の幼馴染でもあるグレン・マクミランは同い年であり、公爵様の次男だ。

 昔から家族ぐるみの交流があり、今宰相補佐官として働いている。

 次期宰相の呼び声高く、ぜひ我が家の婿にと、よく両親が言っているのだ。

 そんな人をそのまま返したとなれば、誰かが怒られるのは目に見えている。

「グレン様が来て下さったのー。すぐに、お通ししなさいょ」

 私の代わりにミアが答えると、侍女のルカが少し眉を顰めた。

 彼女は私の侍女であって、ミアの侍女ではない。しかも、ここは私の部屋なのに。

 こういうのを一般的には、わがままで可愛い妹とでも言うのだろうか。

 ただ前世から引きずってる私には、そういうのはなんにも可愛いとは思えない。

「幸い、目に見えるケガもないから、いいわ……お通しして」

「かしこまりました」

 ため息混じりに答えると、ルカは頭を下げて退出していった。
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