合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

夢(二)


 動けずにいる私は声を上げた。

 振り向いたのは、母ではなく瑞希だった。

 口角を上げてにたりと笑い、繋いでいる手を大きく揺らす。

 まるでこれは自分のものだと見せつけるように。

 泣きそうになるのを堪えて、横を向くと今度は父が家の中にいた。


 父は大きな会社の課長まで昇りつめた人で、仕事人間と言っても過言ではないくらい、家にあまり寄り付かない人だった。

 いつも帰ってくるのは時計が12時を過ぎた頃帰ってきて、朝は私たちが起きる頃に出社してしまっていた。

 たまの休日に家にいたとしても、眉間にしわを寄せ新聞を読んでいるだけだった。
  

「お父さん、あのね……これなんだけど」

「もうお前も大きいんだから、そんなもの自分で何とかしなさい」


 やっとの思いで、聞いて欲しくて声をかけてもいつも答えは一緒だ。

 父は、愛想も会話の仕方も、全て会社に置いてきてしまっているんだと言い聞かせる。
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